2025-02-18
LSPで拓くグローバルリーダー育成メソッドの新たな形 — 明治大学における国際トリプルハイブリッド授業開発

2025年1月10日:対面LSPワークショップの様子
(出典 https://www.mmfe.or.jp/partners/3137/)
グローバルな視点を持ち、持続可能な社会を創造する次世代リーダーの育成
明治大学では2024年度秋学期にLEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)を活用した国際共同授業を開催しました。本プログラムは、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、TBL(トリプルボトムライン)という分析モデルを用いて、持続可能性に関するテーマを探究し、学生たちが異文化間の対話を通じて学びを深めることを目的としています。
このプログラム全体は、明治大学経営学部の永井裕久特任教授によって設計されました。永井教授自身がLSPファシリテータでもあることから(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツとの共同開発によりこれまでにないLSPの大学教育における活用実践ができました。
本記事では、2024年11月22日の日米大学をZoomで接続したライブオンラインLSPセッション、2025年1月10日の明治大学和泉キャンパスでの対面LSPワークショップ授業を振り返りながら、LSPの活用方法とその意義について解説します。
LSPを活用した国際トリプルハイブリッド型授業
本プログラムは、明治大学、シェフィールド大学(イギリス)、シアトルパシフィック大学(アメリカ)の3校連携で進められ、以下の3つの学習形態を組み合わせた「国際トリプルハイブリッド型授業」として設計されました。
①オンデマンド授業(事前学習)
– 学生が時間・場所を問わず、SDGsやTBLに関する基礎知識を学ぶ。
– 英国大学教員(シェフィールド大学)がイギリス企業の持続可能性の事例を紹介。
②ライブオンライン授業(創発的学習)
– 日米大学(明治大学・シアトルパシフィック大学)の教室間をZoomで接続し、ライブオンラインLSPセッションを実施。
– LSPを活用して、TBLのコネクター(Bearable, Viable, Equitable)の理解を深める。
③対面授業(実践学習)
– LSPワークショップを実施し、個別学生が直接手を動かしながら持続可能性の課題を探究。
グループに分かれ、メンバーがTBLのコネクターに基づいたアクションプランをチームとして構築。
この3つの学習形態を組み合わせることで、学生たちは「知識の獲得」から「実践的な探究」へと段階的に学びを深めることができました。
以下に、ライブオンライン授業、対面授業毎に、LSP活用の具体的な流れについて説明します。
2024年11月22日:ライブオンラインLSPセッション
ライブオンライン授業では、TBLのフレームワークに基づく企業分析を行い、LSPを活用して企業のサステナビリティマネジメントに関する意思決定の背景にある価値観を探究しました。
実施内容
目的:企業の持続可能性戦略をTBL(People, Planet, Profit)の視点から分析。
方法:ライブオンラインLSPセッションを通じて、日米の学生が多様な価値観を共有しながら議論を深める。
授業の流れ:
1:企業分析の発表と共有(20分)
事前にGoogleスプレッドシートで各学生が分析した企業のSDGs戦略を共有。
2:グループディスカッション (日米合同チームに分かれ、ブレイクアウトルーム内で実施) & オンラインライブLSPセッション(40分) :LEGOモデルを使って、企業の行動とその背後にある価値観を可視化。
「“Why did this company choose this strategic sustainable action?”(なぜこの企業はこの戦略的な持続可能行動を選択したのか?)」を探究。
3:意見の整理と統合(25分)
LSPを通じて議論のポイントをまとめと、日米合同による最終プレゼンテーションに向けた準備。
4:振り返りと次回の準備(5分)
2025年1月10日:対面LSPワークショップ
対面授業では、Sustainability Management(持続可能性マネジメント)の実践的な探究を目的とし、 LSPを活用したワークショップが行われました。
実施内容
目的:TBLの3つのコネクター(Bearable, Viable, Equitable)を探究し、持続可能性マネジメントについて考える。
方法:LEGOモデルを作成し、学生自身が持続可能な社会のために何ができるかを視覚的に表現。
授業の流れ:
1:SDGsとTBLの理論解説(導入レクチャー)
シェフィールド大学のYi Zhu 准教授がイギリス企業の事例を紹介。
2:LSPワークショップ(ワークショップ)
石原ファシリテーターの指導により、各学生がTBLのコネクターに基づいたLEGOモデルを作成。グループ内で共有し、キャンパスでの持続可能な取り組みを議論。
大学教育におけるLSP活用の可能性
実験授業を通じて、LSPが国際的な物理的な距離のある学習環境において、費用対効果を含め、極めて有効な手法であることが確認できました。とくに、オンラインと対面を併用することにより、相乗的に学生の学びの深化を促し、異文化間の対話を活性化することができました。このプログラムにおいてLSPを活用する機会を与えてくださった明治大学経営学部 永井裕久 特任教授に、心より感謝申し上げます。
参考資料:三菱みらい教育財団記事リンク
「クロスボーダー課題解決力を発揮できる次世代グローバルリーダーの育成
―国際トリプルハイブリッド授業によるSDGs探究学習―」